「星の瞳」の恋愛観

星の瞳のシルエット」についてもう少し触れてみます。

 いや、正確にいえば、冒頭は男一人と女二人を巡る三角関係なのですが、ここに男一人が加わって四角関係になるところが非常に好きです。加わるのは司くんですね。司くんが話に絡んできたところから俄然面白くなっていきます。

 
 全く違う視点からの感想、と西鶴さんはおっしゃいましたが、実は西鶴さんが書かれた感想にはほとんど同意です。

 私も、司くんが自己主張を始めてからの展開が物凄く好きだったりします。

 この展開については、作者の柊あおいさんも全く構想の範囲外だったみたいですね。そもそも、もっと短い連載で終わる予定だったそうですし(彼女の初連載作品だったはずです)おまけに、当初の構想では真理子が主人公だったそうですから。
 確かに真理子は当時の短編少女漫画の典型的なヒロインの一類型だと思います。
 特に取り柄のない女の子だけど、優しくてかっこいい男の子に恋をして、一途に想い続ける、という。これで、美人でおしとやかで成績優秀な親友を差し置いて、その恋が実ればひとつの少女漫画の一丁上がり、という奴です。

 ところが、作者自身が、その親友の方の視点で描いた方が描きやすい、と感じたところでヒロインの変更が行われました。

 作品設定もおそらく大きく変わったでしょうが、ただ、その変更による、ねじれが残ったのではないか、と思います。

 真理子は比較的に積極的に久住君へアプローチをかけようとします。しかし、香澄は、常に真理子を意識しながら、久住君への自分の想いを確かめていくことになるのです。
 結果的に柊あおいさんの少女漫画的な「恋愛観」が香澄の視点を通して多角的、重層的に描き出されることになりました。

 当時のこの漫画のキャッチフレーズが「200万乙女の恋の聖書(バイブル)」という大仰なものでありながら、すんなりと受け入れられたのも、りぼんの学園物の漫画における「恋愛」というものが見事に解体された作品であったからではないでしょうか。

 ああ、時間がなくなったので、とりあえずこの辺で筆を置きます。
 結局、司くんまで話が行かなかったです(^^;