文庫一冊分のラブソング。

 作者に迷惑がかかるといけないので固有名詞は書きませんが、これは本人に読んでもらいたいなと思ったあとがきがあったので、本人にはそれと分かるように書きます。その文庫はあとがきしか読んでおらず、買ってもいないのですが、まあそのあたりはお許しあれ。それから、以下の文章はもしかしたら海燕さんにも分からないほど、ごく一部の人にしか文意がとれないんじゃないかと思います。

 作者と彼女が出会ったのは2000年ごろだったんじゃないかと思います。もう少しあとかな。その数年後、作者がまだ小説家ではなかった頃、僕はプロローグと第一章が少しだけ書かれた原稿をその作者に読まされました。そこには、女陰陽師の異名をとっていた彼女をモチーフにしたキャラクターが描かれていました。その小説が書き上がったのか書き上がらなかったのか、小説賞に投稿したのかしなかったのかは憶えていません。ただ、その後、僕と作者との間でその小説の話が出ることはなかったように思います。

 今日、本屋のとあるジャンルの棚で、その小説を見つけました。題名もその当時とは変わっていましたが、主人公の名前は変わっていなかったので、あああの話を出したのか、ということがすぐに分かりました。

 あとがきには、モチーフとなった彼女への謝辞のみが書かれています。ほかの与太話は一切なく、あなたへの謝辞のみが書かれています。

 銀のジャガーを乗り回す女陰陽師

 作者のデビュー作の初稿を書いた人への謝辞は酷いものでしたが、今回の謝辞には愛があります。少なくとも僕には愛があるように思えます。だから、もしまだ手にとっていなかったら、あとがきだけでも読んでみてください。