君は僕とは違うんだという肯定。

 爆笑問題の太田って、ものすごく正確に正確に喋ろうとしていて、それで滑舌が悪くなっているんですよね。一つの概念を喋るのに、普通の芸人だったら「マジかよ」とか一言で済ませてしまうところを「それで、俺、思ったんだよね。人間って――」みたいなところから延々と話し始めていく。

 どれほど言葉を尽くしても伝わるはずがないことについて、一生懸命言葉を紡いでいく。多分、太田って言語の不便さをものすごく感じている芸人だと思うんです。言葉をいくら紡いでも本当に自分の言いたいことを伝えることなんかできない。

 太田のコミュニケーションは「俺とお前は絶対に分かり合えない」という前提から始まるように思う。つまり、太田というのは、手段と目的という観点からすれば、おそろしく不毛なことを自覚的におこなっている。でも多分、太田にとっては、コミュニケーションというのは分かり合うための手段ではないんでしょうね。むしろ、俺とお前は違う、ということを確認するために言葉を尽くしているようにすら見える。

 唐突ですが、私は「しかし」とか「けど」とかいう接続詞・接続助詞が好きです。特に、英訳するとwhileとかon the other handとかになるような「けど」ですね。例文を挙げるなら「俺はチビだけど、お前はデブだ」みたいな感じの「けど」です。あまり「だから・だから・だから」でつながっていく話は好きではない。「だから」でつなげていくと、最終的には「お前は死ね」と「お前は必要」に分かれそうな気がしてしまう。勝手な想像なんですけど、太田も「けど」は結構好きなんじゃないかなという気がする。

 誰もが「その一方で」でつながっていれば、誰もが生きていていい、みたいな。