怪物と孤独。

 与謝野さんのその歌で口説かれたくはないですね。そして、こういう歌を詠む男を口説きたい人もあまりいないんじゃないかなと思います。

サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい

 この歌、穂村弘という人が詠んだのですが、天才的です。

 ところで天才の話ですが、人間誰しも孤独化願望みたいなものはあるんじゃないかなと思っています。誰しもは言い過ぎかもしれませんが、30%くらいの人にはあるんじゃないかなあと。私にはあります。爆弾の代わりにレモンを仕掛けるみたいな感じで、指一本で世界を動かしてみたいなという願望があって、その上で、自分が爆弾を仕掛けたいなんて思っているとは誰も気づいていないだろうな、というみじめな優越感があります。

 この気持ちは自分にしか分からないけど、そんな自分にしか分からない感情を持っている自分が大好き。といった孤独化願望が結構多くの人にあるような気がするのです。それを見事にドラマの中で表現してしまったのが、数日前にも出てきた「ハタチの恋人」の明石家さんまのような気がするのです。

 この「ハタチの恋人」というTBSの作り話であるところのドラマは、なぜそこまで明石家さんま明石家さんまらしい役所を配置したのだろうと思うくらい、明石家さんま明石家さんまの演技をしています。相手役の長澤まさみ明石家さんまが指名したのではないかと思いたくなるほどです。

 明石家さんまは一部の女性から激しく敬遠されるほどの願望をバラエティ番組などで語っていますが、ドラマではそれが逐一再現されていきます。まず、長澤まさみとデートしたいというところからし明石家さんまなのですが、そのくらいは誰でも思いつきます。問題はその先なのです。

 さんまの正体がばれたあとの長澤まさみ明石家さんまの会話を記憶を辿って抜粋します。

まさみ「第一印象、なんだったと思います?」
さんま「なんやろなあ」
まさみ「腰の低い営業マン」
(同時に)まさみ「ピンポーン」・さんま「ブー」

 はっきりいってドラマを見ていない人にとってはなんのことかさっぱり分からないとは思いますが、とにかく、自分の答えに対して勝手に「ピンポーン」と正解の擬音を入れてしまう女の子は多分さんまさんの好みだろうなあと思えてしまうのです。そして、そのさんまさんはその「ピンポーン」にあわせて「ブー」とくだらないオチをつけてしまう自分が大好きなのです。

 さらに、公園でボールが転がってきたときに、長澤まさみがボールを蹴り返すのですが、蹴り返したボールが明後日の方向に行ってしまって、長澤まさみが「あー、ごめんごめん」と笑いながら子供たちに謝るのです。こういうときにさんまさんだったらこう評します。「もしヒデみたいなキラーパスを送ったら嫌やでー」。

 話は随分それてしまった気がしますが、海燕さんの「怪物」という言葉の意味を把握したときに、明石家さんまが浮かんだのです。周りがどう触れていいのか分からないという以上に、本人は孤独だろうな、と思うのです。さんまさん本人が自分のことをどう考えているかは知りませんが。

世界音痴

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