ヒーローが好き。

 たしかに、『タイム・リープ』はおもしろかったなあ。

 ああいう時間パズル小説は、SF的にはそれほど珍しいものではないのですが、やはりあれは出色の出来だと思う。ひとつのピースものこさずパズルがたたまれて行くことの、えもいわれぬ快感。

 同系統の作品としては、ハインラインの『夏への扉』とか、広瀬正の『マイナス・ゼロ』が有名だけれど、『タイム・リープ』のほうが出来が良い。

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

マイナス・ゼロ (集英社文庫 141-A)

マイナス・ゼロ (集英社文庫 141-A)

 一応、タイム・リープ現象に巻きこまれた女の子の視点で語られるわけだけれど、明らかに真に主人公は若松ですね。怜悧な知性と、不器用な優しさ。

 結局、ぼくは物語にヒーローを求めているのだと思う。ヒーローといっても、「正義の味方」みたいなものじゃなく、「生き方の理想」といえばいいか、こういうふうになりたい、と思わせるような人物。

 そういうキャラにこそ、「萌える」。でも、ひとがいう「萌え」とは意味が違うかもしれないですね。